千の神隠し☆幻想廃人

　「ヴォルフラムにそう言われたら？」
　想像してみた。必死で想像してみた。一生懸命想像してみた。
　だがコンラッドの必死の想像は、忠誠心と罪悪感で中断されてしまった。
　何せ彼の可愛い弟は、目の前の魔王陛下と、過ちからだとはいえ婚約しているのだ。その陛下をして駄目男とか、ヴォルフラムには相応しくないなんて、そんな恐ろしく不敬なこと、思ってもいないし口が裂けても言えない。
　コンラッドは切れ切れに答えた。
　「結構、お似合いかと、思うん、ですが」
　「なにー！？　それどういう痩せ我慢だよ！？　兄弟か、兄弟だからあんまり具体的に想像できないのか？じゃあ、じゃあ甥とか姪とか親戚や友達の家の子でもいいや。赤ん坊の頃から知ってて、可愛がってた子供。両親も知ってて、一緒に名前考えたり、誕生日ごとにプレゼントしたりして微笑ましく成長を見守ってきた子供だよ。その子がある日いきなり見知らぬ駄目男を以下略ー！」
　もう一度想像してみた。懸命に想像してみた。人生のかかった作戦のつもりで想像してみた。
　だがコンラッドの決死の想像は、またしても中断されてしまった。今度は家族愛と罪悪感で。
　何せ彼が生まれたときから見守ってきた可愛い名付け子は、過ちからだとはいえ彼自身の弟と婚約してしまったのだ。実際、ヴォルフラムは駄目男ではないし、陛下に相応しくないなんてそんな可哀想なこと、思ってもいないし売り言葉に買い言葉でも言えない。
　コンラッドは苦しげに答えた。
　「やっばり、心から、祝福しそうな、気がするんです、が」
　「なんだとー！？」
　ユーリは髪に指を突っ込み、この世の終わりと言わんばかりの形相で叫んだ。
　「あんたって冷血だな！」
　誰と誰で想像したと思ってるんだ。
　自分のことだとは考えてもいなさそうなユーリを前にして、コンラッドは困り果てて挫けそうになりながら、話を元に戻そうとした。